歩合給と固定給の違いってなに?ノルマや給料、転職時に気を付けるポイントをご紹介します!
そこで今回は歩合給という給与体系の概要やメリット、デメリットなどについて詳しく紹介したいと思います。
そもそも歩合給ってどんな制度?
会社から支払われる給与体系は大まかに「固定給」、「固定給+歩合給」、「完全歩合給」の3つに分けられます。そこで、歩合給とはどのような制度なのか、他の給与体系と比較しながら説明していきましょう。
固定給
固定給とは、一定時間働くことで一定の金額が支払われる給与形態のことです。従って、仕事の成果や能率などによって変動することがなく、一定の金額が支払われます。固定給は他と比べて安定感のある給与体系といえるでしょう。
また、常に一定というわけではなく、定期的な昇給などが発生する場合があります。
一般企業に勤めるサラリーマンの多くが固定給であるため、最も馴染みが深い給与体系ではないでしょうか。
固定給には、さまざまな種類があります。
まず、正社員の多くが該当すると思われる「月給制」は、1カ月単位で支払われる給与体系のことを指します。
次に、アルバイトやパートに多い「時給制」ですが、こちらは1時間単位で給与が支払われ、いわゆる「日雇い」などといわれる「日給制」は、1日単位で支払われる給与体系です。
また、1週間単位で支払われる「週給制」という給与体系もあります。これは、基本的に時給制や日給制で支払いをしている会社が、週払いも可能にしているというケースがほとんどです。
最後に、プロのスポーツ選手などに多い「年俸制」ですが、こちらは1年間単位で支払われる給与体系のことを指します。
固定給+歩合給
「固定給+歩合給」の説明をする前に、まず歩合給について簡単に説明したいと思います。
歩合給とは、売り上げや業績といった仕事の成果に応じて、金額が変動する給与体系のことです。
固定給としても一定の給与が支払われますが、自分が仕事で頑張った分がインセンティブとして、歩合で給与に反映される形で支払われます。
「固定給+歩合給」では、給与内における固定給と歩合給のバランスを変えることによって、その性質が大きく異なります。
例えば、固定給の割合が高い場合であれば、変動部分が少ないため比較的安定した給与となります。
一方、歩合給の割合を高くした場合は、仕事で高い成果を出せれば高い給与がもらえますが、ノルマを達成できない月などは給与も安くなってしまいます。
そのため、毎月の収入が固定給と比べると安定しないというリスクがあります。
自分の実力やライフスタイルなどを加味したうえで、適切なバランスの割合を選択することが重要といえます。
「固定給+歩合給」を採用している職種の多くに、不動産、保険などの営業職、自動車の販売職などが挙げられます。
上記の職業ではノルマを達成するために社員のモチベーションを引き上げる狙いがあります。その他の事例としては、美容師やネイリストとなど、本人の技術や人柄などが集客に影響するような職種も「固定給+歩合給」を導入している事業者が多いようです。
美容師やネイリストの場合、指名制を採用しているお店が多いため、たくさんのお客さんを呼べる人材には多くの給与が支払われる仕組みとなっています。
また、人材派遣会社も「固定給+歩合給」を採用しているケースが多い業種です。
完全歩合給
完全歩合給とは、俗に「フルコミッション」ともいわれる、文字通り歩合給だけの給与体系のことです。
労働基準法では、「出来高払制保障給」と定められています。
固定給の部分が一切ないため、極端なケースだと業績や成果がゼロだと給与もゼロになってしまうケースもあります。
ただし、日本において完全歩合給が適用されるのは、業務委託契約を結んだ場合に限られます。
従って、個人ではなく、個人事業主でないと契約できないということになります。
また、個人事業主であっても、働き方の実態から判断して「労働者」とみなされた場合も同様に完全歩合給を適応することはできません。
このように、日本において正社員やアルバイトに対して完全歩合給を適応するのは違法となるのです。
一方、労働基準法第27条には、以下のような記載があります。
「出来高払制その他の請負制で使用する労働者については、使用者は、労働時間に応じ一定額の賃金の保障をしなければならない。(最低賃金)」
要するに、労働者に対して一定額の賃金保障をする義務があるということになるため、前述した「固定給+歩合給」となるわけです。
完全歩合給を採用している職種は、「固定給+歩合給」で紹介した営業業務を、個人事業主として業務委託で受けるケースが多いです。
また、タクシー会社も「固定給+歩合給」を採用しているところが多いのですが、「個人タクシー」は業務委託契約であるため完全歩合給を採用している会社もあるようです。
参照元:総務省「労働基準法」
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S22/S22HO049.html
参照元:厚生労働省「さまざまな雇用形態」 http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudouseisaku/chushoukigyou/koyoukeitai.html
固定給・完全歩合給・固定給+歩合給のメリット・デメリット
それぞれの給与体系の、メリットとデメリットについて紹介します。
固定給のメリット・デメリット
固定給の最大のメリットは、毎月決まった額の給与が保障されるため、生活が安定するという点でしょう。
先の見通しも立てやすいため、大きな買い物をしたり、人生設計が立てやすいのもメリットです。
一方デメリットは、仕事で高い成果を上げたり資格を取ってスキルアップしたりしても、給与の金額がいきなり大幅に上がることは期待できないという点です。
基本的に、昇給、昇格以外で給与が大きく上がるケースはあまりありません。
歩合給のメリット・デメリット
歩合給のメリットとしてまず挙げられるのが、毎月の仕事の成果が給与に直接反映されることです。
頑張った分だけ給与が上がる点は、歩合給における最大の魅力で、自ずと仕事に対するモチベーションも高くなります。
また、歩合給の会社は裁量労働制を採用している場合もあり、その場合は労働による拘束時間が固定給の会社と比較して短い傾向にあります。
高い業績を上げている人であれば、基本的に顧客に直行してそのまま直帰するということも出来るため、会社に出社するのは月に数回程度ということもあります。
一方、歩合給における最大のデメリットは、固定給のように収入を安定させることが難しく、生活が不安定になりがちな点です。
毎月の給与の金額に差があると、先の予定が立てづらくなるのもデメリットの一つに挙げられます。
また、歩合給を採用している職種は、裁量労働制のところも多く、人によっては給料のために働き過ぎてしまうというデメリットもあります。
厳しいノルマを達成するため躍起になり、仕事のオンとオフの区別があいまいに人もいるようです。さらに、自身のスキルUPのための勉強などに多くの時間を費やすこともあるため、仕事以外の時間も拘束される可能性もあります。
完全歩合給はメリット、デメリットが両極端
先ほど、完全歩合給は個人事業主に適応される給与体系であると説明しました。
そのため、「固定給+歩合給」よりも毎月の給与の出来高がダイレクトに生活に影響を与えます。
高い業績を上げた月であれば、給与も高くなるため問題ないのですが、業績が芳しくない月は、最悪の場合収入がゼロになる可能性もあります。
従って、形式上は会社勤めなのですが、その実態としては自営業の働き方と同じと思ってよいでしょう。
自分に合ったバランスが選べる「固定給+歩合給」
「固定給+歩合給」のメリットは、それぞれのメリットを享受できるという点です。
しかも、前述したように固定給と歩合給の割合が企業や業種によって異なるため、自分にあったバランスのものを選べるというメリットもあります。
また、歩合給の割合を高くした場合であれば、思うように業績が上げられなかった月があったとしても、固定給は支払われます。そのため、完全歩合給のように収入がゼロになる月は、原則としてありません。
一方、「固定給+歩合給」のデメリットは、固定給、歩合給のバランスによっては、メリットの恩恵が中途半端になってしまうという点が挙げられます。
また、固定給と歩合給の割合が自分に合わないと、生活に影響が出てしまうリスクがあります。
例えば、営業が苦手な人が歩合給の割合が多い職場に入ってしまうと、毎月、思うように業績が上げられず、万年給与が安いといった状況に陥る可能性などがあります。
異なる給与体系に転職するときのポイント
転職する際、これまでとは違う給与体系の会社に転職する場合には注意が必要です。
いくつかのケースに分けてポイントを説明します。
固定給の人は転職先も固定給に絞るのがおすすめ
現在固定給で働いている人は、固定給を採用している会社にフォーカスを絞って求人を探すべきでしょう。
特に、結婚して家族がいるような人であれば、安定した生活を送る必要があると思いますので、リスキーな歩合給は避ける方が無難です。
ただし、同じ固定給といっても、前述したようにさまざまな種類があるため、留意しておく必要はあります。
特に、「月給制」から「年俸制」に代わる場合や、その逆などのケースに注意が必要です。
また、各種手当や残業代の有無なども加味しておく必要があります。
それらを踏まえ、現在の固定給より高い給与をもらえる固定給の会社を求めるのがおすすめです。
「固定給+歩合給」に転職したい人
「固定給+歩合給」の会社に転職する場合は、固定給ではなく歩合給の占める割合に注意すべきです。
固定給の割合が大きいと、高い業績を上げた月であっても、これまでのように給与の金額は上らなくなります。
つまり前職も「固定給+歩合給」だった場合は「前職であれば、もっともらえたのに……」という状況に陥ることもあります。
「固定給+歩合給」は、固定給が一定の割合を占めるため、給与の金額が安定する反面、頑張った分が大きく反映されづらくなるというデメリットがあることを、事前に理解しておく必要があります。
完全歩合給の人が歩合給で契約を結ぶ場合(正社員雇用でなく個人事業主の場合のみ)
いわゆるフリーランスといわれる個人事業主が歩合給で企業と契約すると、一定の給与が保障される反面、歩合給で得られる給与の金額が完全歩合給と比べ下がる可能性があります。
そのため、契約時の条件で提示される「案件ごとのバック率」がどの程度なのか、あらかじめ把握しておくことが重要です。
例えば、不動産営業など大きなお金が動く商材を扱う場合、完全歩合給の方が当然バック率も高くなるため、継続的に業績を上げられる実力がある人にとって、歩合給が不利になる可能性も十分あります。
まとめ
固定給と歩合給にはそれぞれメリットもデメリットもありますが、自分がどう働きたいかによって、選択肢は大きく異なってきます。
自分のライフスタイルや能力などを考慮し、最良の選択をして自分にあった給与体系の職場を見つけることをおすすめします。