更新日:2025年03月14日

車の特定整備とは? 分解整備との違いも解説

特定整備とは、自動車の電子制御装置などの整備を含む新たな制度です。自動車整備に携わる場合、特定整備の対象となる箇所や作業内容について正しく理解しておく必要があります。この記事では、特定整備の意味や分解整備との違い、特定整備の認証工場になる条件、自動車整備士に求められるスキルなどについて解説します。

車の特定整備とは?

特定整備は、2020年4月から施行された自動車整備に関する制度です。従来の分解整備に加えて、電子制御装置に関連する内容が定められています。特定整備が定められた背景は次の通りです。

特定整備が定められた背景

特定整備制度は、自動車技術が進歩した近年の状況に対応するために定められました。最近では、自動ブレーキや車線維持支援など、電子制御装置を活用した機能が多くの自動車に備わっています。また、今後は自動運転に関する技術も発達していくことが予想されます。これらのシステムを適切に整備できるようにすることが、特定整備が定められた理由です。

特定整備と分解整備の違い

特定整備と分解整備は、整備の対象部位や作業内容などが異なります。それぞれの内容は次の通りです。

分解整備で行う作業と対象の部位

分解整備とは、原動機や走行装置、操縦装置といった自動車の部品を取り外して点検や修理を行う作業を指します。自動車を安全に運転する上で重要な部品を扱うため、整備に高度な技術や知識が求められることが分解整備の特徴です。

分解整備の主な対象部位として、エンジンやその周辺の部品が挙げられます。また、ハンドルの操作に関連する部品や、ブレーキホース、ブレーキドラムなどの制御装置なども分解整備の対象です。これらのほか、トランスミッションやプロペラシャフトなどの動力伝達装置や、エアスプリング、リーフスプリングなどの緩衝装置、キングピンなどの連結装置も分解整備の対象となります。

特定整備で追加された内容

特定整備では、分解整備に加えて電子制御装置に関する内容が追加されました。具体的には、自動走行装置やその動作に影響を及ぼす可能性がある整備、自動ブレーキや車線維持支援などに使用されるカメラやセンサーの取り外しなどが特定整備に含まれます。また、これらに関連するカメラやレーダーが取り付けられているバンパーやフロントガラス、グリルなどの取り付けや取り外しも特定整備の対象です。

特定整備の認証工場になる条件

特定整備を実施できる認証工場になるためには、作業場の面積や設備・道具、整備主任者などに関する要件を満たす必要があります。具体的な内容は次の通りです。

作業場面積

認証工場には、車両整備作業場と点検作業場、部品整備作業場、車両置場として使用するために十分な面積が必要です。また、電子制御装置の整備を行う場合は、電子制御装置点検整備作業場も必要となります。ただし、電子制御装置点検整備作業場は、車両整備作業場や点検作業場との兼用も可能です。

それぞれの作業場に必要な面積は、整備対象の自動車や装置の種類に応じて設定されています。例えば、普通自動車を対象とする場合は、電子制御装置点検整備作業場は間口2.5m、奥行き6m、電子制御装置を調整するエーミング作業の実施に十分な天井高さが必要です。また、車両置き場には間口3m以上、奥行き5.5m以上の面積が求められます。

設備・道具

特定整備の認証工場には、電子制御装置を整備するためのスキャンツールや、水平面を確認するための水準器が必要です。また、特定整備に必要な機器や法令、自動運転装置に関する情報を入手できる体制も整える必要があります。

整備主任者の要件

特定整備の認証工場になるためには、一定の資格要件を満たした整備主任者が必要です。整備主任者への任命要件として、1級または2級の自動車整備士資格が求められます。また、整備主任者法令研修や、整備主任者技術研修を受けることも整備主任者になるための条件です。さらに、特定整備の認証工場における整備主任者は、電子制御装置整備の整備主任者等資格取得講習を受ける必要があります。

特定整備制度で自動車整備士に求められるスキル

特定整備制度が始まったことで、自動車整備士にはさらに高度な技術と知識が求められるようになりました。特に、電子制御装置に関連する整備を安全かつ正確に行うため、1級自動車整備士のニーズが高まっています。

1級自動車整備士の資格は2級や3級と異なり、1つの資格でガソリン、ディーゼル、シャシの全ての部品の整備が可能です。また、1級自動車整備士の資格取得には、電気自動車などに関する知識も身につける必要があります。これらの幅広い知識や技術が、特定整備に携わる自動車整備士に求められるスキルです。

まとめ – 特定整備の制度について正しく理解しましょう

特定整備は、従来の分解整備に電子制御装置に関する内容が追加された制度です。自動ブレーキや車線維持支援といった技術に使用されるカメラやセンサーなどを適切に整備できるようにするため、2020年4月から特定整備の制度が施行されています。特定整備の制度について理解した上で、自動車整備士として求められる知識やスキルを身につけましょう。

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