更新日:2024年11月08日

退職時の有給消化でよくあるトラブルとその対策

取得していない有給が残っている場合、退職前に取得してから会社を辞めることが可能です。ただし、会社側が有給消化を拒否したり、業務の引き継ぎの都合により有給消化が難しくなったりする場合もあります。

この記事では、退職にあたって有給消化を円滑に進めたい方向けに、よくあるトラブルやその対策について解説します。

有給消化と退職の基礎知識

まずは前提知識として、有給消化の概要や、退職時に有給を消化する際の基本ルールについて確認しましょう。

有給消化とは?

有給消化とは、出勤しなくても給料が支払われる「年次有給休暇」を取得することです。

有給休暇は労働基準法で定められている制度で、雇い入れ日から6か月経過し、全労働日の8割以上出勤している労働者には10日間の有給が与えられます。2019年4月からは、働き方改革法の施行によって、有給の発生条件を満たした従業員に対して年5日間の有給消化が義務付けられました。

退職時の有給消化の基本ルール

有給は、会社に在籍している間のみ消化が可能です。そのため、最終出社日と退職日が同じ場合は、その日までに有給消化しておく必要があります。

最終出社日よりも後に退職日を設定する場合には、最終出社日から残っている有給の日数分経過した日付が退職日となることが一般的です。

有給消化に関するよくあるトラブル

有給消化は労働者の権利ではあるものの、必ずしも円滑に有給を取得できるとは限りません。有給消化に関する主なトラブルとして、次のようなケースがあります。

会社が有給消化を拒否するケース

1つ目のトラブルは、退職時の有給消化について上司から拒否されることです。ただし、原則として有給消化をさせないことは法律違反となるため、適切に手続きを進めれば有給は取得できます。もし、上司から有給消化を拒否された場合には、より上の立場の上司や人事部などに相談しましょう。

業務の引継ぎと有給消化の調整

2つ目のトラブルは、業務の引継ぎに忙しく、退職日までに有給消化ができないケースです。特に、最終出社日と退職日が同じ日付の場合は、最後の日まで引継ぎをするために有給が取れないことがあります。

有給消化を円滑に進めるための対策

よくあるトラブルを避け、有給消化を円滑に進めるためには適切な対策が必要です。ここでは、退職時に有給を消化するためのポイントを紹介します。

退職を早めに伝える重要性

退職希望日を会社側に早めに伝えておくと、退職までのスケジュールに余裕ができ、有給消化を計画的に進めやすくなります。退職について申し出るタイミングは企業の就業規則に定められていることも多いため、事前に確認してできるだけ早く退職の意思決定を行いましょう。

引継ぎ業務の事前準備

引継ぎ業務をスムーズに進めることも、有給を消化するために重要です。後任の担当者に伝えるべき内容として、自身が担当していた業務の進め方や関係者の連絡先などをまとめておきましょう。

労働基準監督署や労働弁護士の活用

上司や人事部に相談しても有給消化が難しそうな場合は、外部の専門家の力を借りることも効果的な方法です。労働基準監督署に相談すると、企業に対して有給消化についての指導をしてもらえる場合があります。また、労働問題に強い弁護士に相談することも、有給消化の手続きを進める方法の1つです。

有給消化と転職活動の両立

退職の意思を会社に伝えた後、有給を消化している期間中は、転職活動に取り組むこともできます。有給消化と転職活動を両立するために押さえておくべきポイントは次の通りです。

転職先への影響を最小限にする方法

転職先として内定した企業から、できるだけ早いタイミングでの就労開始を希望された場合、有給消化中に働き始めることも法律的には可能です。ただし、原則として現職と転職先の両方の就業規則で、二重就労が認められている必要があります。

トラブルのリスクを最小限に抑えたい場合は、有給消化が終わり、現職を辞めたあとから転職先で働き始めたほうが無難です。

有給消化期間中の転職活動のポイント

有給消化期間中に転職活動を行う場合には、転職先の入社スケジュールを決めやすいように、有給消化期間であることや退職日を採用担当者に伝えておきましょう。情報が曖昧なまま転職先が決まってしまうと、有給を消化できていないタイミングで退職しなければならなくなるリスクがあります。

有給消化ができない場合の対応策

有給消化が難しい場合には、次のような方法で解決できる可能性があります。

有給の買い取りとその条件

有給を企業に買い取ってもらうことは、特定の条件を満たした場合のみ可能です。退職日に有給休暇が余っていて、労働者と企業の合意が取れていれば、合法的に有給を買い取ってもらえます。

また、福利厚生などにより、法律で定められた以上の日数の有給休暇が発生していた場合にも問題なく買い取ってもらうことが可能です。

有給が消化できない場合の法律的対策

有給が適切に消化できないまま退職してしまった場合には、訴訟を通じて慰謝料を請求できる可能性があります。ただし、訴訟を起こす場合には法的な知識が求められるため、弁護士への依頼が必要です。費用や時間がかかることを考慮した上で、法的な手段を取るかどうかを検討しましょう。

まとめ – 退職時の有給消化は計画的に行いましょう

退職時の有給消化を滞りなく進めるためには、余裕をもって退職のスケジュールを決め、引継ぎを行うことが大切です。会社に対して退職の意思を早めに伝える、引継ぎの準備を行うなどのポイントを押さえて、計画的に有給消化を行いましょう。また、有給消化は法律で定められた権利のため、企業側が拒否することは原則としてできません。もしトラブルが生じた場合には公的機関や弁護士への相談も視野に入れて適切に対処しましょう。

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