生成AIを転職活動で活用する人の割合は?用途やメリット・デメリットをアンケート調査
ChatGPTをはじめとした生成AIの発展がめざましい昨今。誰もが気軽に使えるようになってきた生成AIは、テキスト作成からデータ処理、アイデアの壁打ち相手まで、さまざまなビジネスの場面で活用されています。
そんな話題の生成AIですが、転職活動で活用している人もいることをご存じですか? 「クリエイト転職」では、転職活動での生成AI利用経験者を対象に、実態を調査しました。生成AIは転職活動でどのように使われていて、どんなメリットや課題があるのでしょうか。実際に利用した人のデータを分析すると、新時代の転職活動のトレンドが見えてきました。
アンケート調査概要
有効回答数: | 事前調査6826名、本調査330名(転職活動での生成AI利用経験者) |
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調査期間: | 2024/3/28~2024/4/6 |
調査機関: | 株式会社ジャストシステム(「Fastask」利用) |
調査対象: | 全国20歳以上の会社員 |
調査手法: | Webアンケート |
3人に1人は「転職活動に生成AIを使ったことがある」
2022年12月以降に転職活動をしたと答えた人を対象に、生成AI利用の有無について聞きました。
※生成AIとは、入力された指示等に対してAIがテキストや画像などを生成し出力するAI(人工知能)のことを指します(例:ChatGPT)。
アンケートの結果、37.8%が「使ったことがある」と回答。転職経験者のおよそ3人に1人は、生成AIを使って転職活動をしていることが明らかになりました。一方で、半数以上にあたる59.6%は「使ったことはない」と回答しています。
生成AIを活用する転職経験者はまだ多数派ではないようですが、決して無視できない割合が可能性を見出し、有効に活用し始めています。生成AIはまだ過渡期の段階にあるため、今後この割合はさらに伸長していく可能性があると考えられるでしょう。
なぜ転職活動に生成AIを活用した?
生成AIを転職活動に活用した人に、なぜ使おうと考えたのか理由を聞きました。
理由の1位は59.7%の「作業を効率化したいから」となりました。続いて、2位の「わからないことを調べたいから(41.5%)」、3位の「AIが流行っていたから(39.7%)」となっています。
半数以上の人が、自分の作業を効率化させるために生成AIを活用していることが分かります。生成AIは指示された具体的なタスクをこなすのが得意であるため、特長を活かした有用な活用方法だと言えるでしょう。
一方、「AIが流行っていたから」「使った方がいいと言われたから」といった受動的な動機も見受けられます。生成AIが流行している時勢だからこそ、「トレンドに乗ってとりあえず使ってみた」という人も多いタイミングかもしれません。このようなライト層の割合がこれからどのように変動していくかは、今後も注視する必要があるでしょう。
生成AIを使った転職活動の作業内容ランキング
転職活動で生成AIを使った人は、実際にどんな用途で活用していたのでしょうか。
アンケートの結果、1位は「自己分析(51.8%)」、2位は「スケジュール作成(46.7%)」、3位は「企業研究・業界研究(34.5%)」となりました。
生成AIで転職活動のための自己分析をするには、「プロンプト」と呼ばれる指示文で「あなたはキャリアコンサルタントです」などと指定し、AIに相談相手となってもらう方法があります。インターネットで検索すると多くのプロンプト集が公開されているため、アンテナの高い転職者は積極的に情報収集し、活用していたと考えられるでしょう。
また、転職サイトのなかには、AIを使って自己分析や適職診断ができる便利なものもあります。直接ChatGPTなどの生成AIに触れていなくても、そのようなサービスで間接的にAIの支援を受けたことがある転職者は一定数いるのではないでしょうか。
転職活動に生成AIを使うと、実際何が良かった?
生成AIを活用して良かった点については、1位が「自己分析がうまくいった(48.2%)」、2位が「知識が得られた(45.8%)」、3位が「作業時間が短縮できた(36.4%)」という結果になりました。
そもそも半数以上の人が自己分析を目的として生成AIを使っていたと考えると、「自己分析がうまくいった」が1位という結果には、満足度の高さが伺えます。エージェントやキャリアコンサルタントの力を借りなくても、AIとの対話でキャリアやスキルの棚卸しができる時代がもう来ているのかもしれません。
一方で、作業効率化については理想と現実のギャップがあると考えられます。AIを活用する理由の1位に「作業を効率化したいから」があったにもかかわらず、実際に作業時間を短縮できた転職者は全体の3分の1程度に留まりました。
生成AIを使い始めた最初のうちは、やり方を調べたり、プロンプトを調整したりする手間があるため、ある程度の工数がかかるものです。「使えばすぐに作業時間が削減される」わけではありません。しかし、自分用にカスタマイズした生成AIを使いこなすことができれば、さまざまな作業を効率化する心強いパートナーとなっていくでしょう。
生成AIの利用で感じた課題は?
転職における自己分析や業界研究などに便利な生成AIですが、課題やデメリットはあるのでしょうか。
アンケートの結果、1位は「生成AIを使ったことがばれないか心配になった(40.0%)」、2位は「余計に時間がかかってしまった(33.6%)」、3位は「内容が薄かった(28.2%)」となりました。
生成AIを転職活動に活用した半数弱の人が、企業側に生成AIを使ったことがばれないか心配しており、ネガティブな感情を持っていることが伺えます。昨今、生成AIが広く一般に浸透していくなかで、「試験やレポートに悪用された」といったニュースも報じられてきました。企業側も不正対策を始めています。生成AIが出力した志望動機や自己PRをそのまま使えば、企業側に「ばれる」リスクはもちろん高まります。あくまで参考程度に、自分の言葉で作成するようにしましょう。自分自身が不安になるような後ろ向きな使い方をしないことが大切です。
生成AIが出力した文章をそのまま使わず、自分で考えながら調整すると、余計に時間がかかってしまうこともあると思います。「自力でやったほうが早いのか」「そもそも生成AIに任せるべきタスクなのか」など、個々人が判断しながら自分に合った使い方を模索する必要があるでしょう。
次の転職活動でも生成AIを使う? 使わない?
メリット・デメリットのある生成AI。実際に利用した人たちは、次の転職活動でも使おうと考えているのでしょうか。
アンケートの結果、「絶対に使うと思う(28.5%)」と「使うと思う(58.2%)」の合計は86.7%となり、実に9割弱が肯定派という結果となりました。「使わないと思う(1.8%)」と「絶対に使わないと思う(0.3%)」の合計は2.1%なので、否定派は非常に少ない割合と言えるでしょう。
新しいことを学んで作業する手間は多少なりともかかるものの、その分の効果を実感できたからこそ、大多数が再度利用したいと考えているのではないでしょうか。今後も生成AIを有効活用し、転職の成功体験を積んでいく人は増加すると考えられます。
アンケート調査結果のまとめ
今回の調査では、転職経験者のおよそ3人に1人が、生成AIを活用している結果となりました。生成AIは転職活動において、自己分析やスケジュール作成、業界研究などに有益なツールと考えられます。なお、生成AIで出力した文章を丸写しで履歴書に書くようなことは現状望ましくありません。あくまで正しい倫理観の範囲内で、あなたの転職をサポートするパートナーとして生成AIを活用してみてください。
なお、本調査がおこなわれた2024年はまだ、生成AIが一般社会に浸透し始めた黎明期と言えるでしょう。そのタイミングですでにAIを使いこなし、転職活動に活かせる人が、先駆者利益を得ている状況とも考えられます。今後、自己分析から、適職探し、企業研究まで、転職活動のあらゆることがAIでスムーズにできるようになってくるのではないでしょうか。そんな近い将来に向けて「まずは使ってみる」というフットワークの軽さが、AI時代を乗りこなしていくヒントなのかもしれません。